大を小で流す。

往往にして、大は小で流します。

面接、生オネェ。

ギュイイイイイイン。ジャンジャンジャカジャカ。ジャンジャンジャカジャカ。ギュン、ジャーーーーーーーン。

 

※楽器ができる男に憧れて、文字ギター(エレキ)でオープニングを飾ってみましたが、本文とは一切関係ありません。

 

(暗転)

 

久々の面接。面接といっても、バイトの面接。それでも僕は緊張していた。予定時間より20分も早く着いた僕は、会社説明会でよく使われていそうな、長机とホワイトボードがある広めの部屋に通された。

 

監視カメラでみられていたら印象が悪くなると思いスマホには触れず、読書をして待つのは「『お、こういうちょっとした時間にスマホじゃなくて読書か』と思われたいんだな」と面接官に思われたら恥ずかしいのでそれもやめておいた。

 

行き道のコンビニで買ったお茶を飲み、窓の外のビルビルを眺め、お茶を飲み、高速を走るトラックを目で追い、お茶を飲み、肩周りのストレッチをし、お茶を飲み、深呼吸をし、お茶を飲み、そんな風に時間を潰していた。

 

そうこうしていると40台前後であろう面接官が1人入ってきた。彼は長机を面接用に並べ始めた。コンビニでたとえると、僕の机と彼の机はちょうどレジとガムや飴の商品棚くらいの距離があった。彼は次に椅子を準備したのだが、なぜか2つ並べて置いた。バイトの面接なのに2:1か、と僕は心の中で舌打ちをした。

 

「遅くなっちゃってごめんなさーい」

案の定、もう1人が入ってきた。それはそれは軽いノリで入ってきた。同じく40台くらいのおっさんだった。しかし彼が着ていたのはアロハだった。アロハに短パンだった。僕はそれをどう捉えていいか分からなかった。けれど、アロハの彼に言いようのない違和を感じた。

 

アロハは背筋を伸ばしスタスタ歩いてくると、椅子に座るなり言った。

「なんか遠くなぁい?近づけましょう」

アロハに感じた違和の正体が、少しわかった気がした。たぶん、オネェだ。でもこの時点では確信を得ることはできなかった。アロハを着てはいるものの、見た目は普通のおっさんだった。

 

机をくっつけて、レジ机を挟んだ店員と客くらいの距離になり面接が始まった。近くで見るとアロハの肌がカッサカサなのがわかった。どういうことだ。雨があまり降っていないけれど、一応、梅雨だ。湿気が多いこの時期に、カッサカサの肌で、アロハを着ている。おそらくオネェ。僕の勝手なイメージだが、オネェは美容に関して女性以上に気を使っているものなのに、カッサカサの肌で、アロハを着ている。この、おそらくオネェ。

 

質問はほとんどアロハじゃない方からされ、答えていた。大学では何をしていましたか?広告に興味を持ったきっかけ(求人広告のバイトに応募していた)は何ですか?など、基本的な質問に、全身筋肉痛の日に急な階段を上るようなたどたどしさで受け答えをする。その間、アロハはというと少し斜に構えて座り、僕のたどたどしさを包み込むような優しいうなずきを何度もしてくれている。心なしか、目が優しい。

 

志望動機を問われる。僕は、就活が苦手なのでまずは入りやすいバイトから受けようと思いました、と正直に答えた。アロハじゃない方が掘り下げてくる「どうして苦手なんですか?」僕は答える「友達と話していると、就活なんて嘘ついたもん勝ちと言われるのですが、どうも自分に嘘をつけなくて…」すると、アロハが目を閉じ味わうようにうなずいた後、面接が始まってから初めて口を開いた。

 

 

 

 

若さよね。

 

 

 

 

若さよね、である。僕はこの瞬間、アロハがオネェであることを確信した。80%は疑っていたけれど、若さよね、の一言で100%、いや、120%確信した。想像してほしい。自分のお父さんがテレビで青春ドラマを観て「若さよね」と噛みしめるように言うだろうか。「若いなぁ〜」じゃなく「若さよね」だ。中年のおっさんはどれほど若いものを見たって「若さよね」とは言わない。甲子園を観たって、広瀬すずを見たって、テレビ初登場の若手芸人を見たって、「若さよね」とは言わない。

 

 

つまりカサカサアロハオネェということになる。それはもう世界観が千鳥じゃ。カサカサアロハオネェは千鳥の担当じゃ。千鳥のノブにしか捌けん案件じゃ。クセがすごい。濃い〜〜。

 

 

 

とはいえ、オネェに悪い人はいない、というこれまた勝手なイメージに違わず、話している感じ、とても良い人のような気がした。「若さよね」と言い放ったあと、「良いじゃない、若さ、大切よ」と添えてくれた。とてつもない深みを感じた。言葉の意味以上に含蓄のある感じがした。

 

 

考えてみると、生でオネェを見るのは初めてだった。当然話すのも初めてだ。僕は生のカサカサアロハオネェに圧倒されながらも、感動したし、この会社で働いたら面白いことが起こりそうだと思った。

 

 

そんなこんなで、僕は今、カサカサアロハオネェからの連絡を待っている。